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そもそも長老とは。使徒亡き後、初代教会を指導した三役の変遷
1世紀頃、教会にはビショップ、長老、執事がいました。今回はこれらの役職について見ていきましょう。
執事が最初に出てくるのは使徒の働き6:1-6です。この時に選ばれた7人は新約聖書では執事と呼ばれることはありませんでしたが、エイレナイオスなどの教父たちは“ステパノ、使徒によって最初の執事に選ばれた者”と記しています。
最初、執事の役割は、使徒たちが“もっぱら祈りとみことばの奉仕に励む”ことができるように“毎日の配給”をすることでした。
執事はビショップの補助をする役でした。
ローマの執事の数は7人で、ビショップ、長老に次ぐ3番目のランクでした。エウセビオスは次のように書き残しています。“公同の教会にはビショップはひとりであるべきだ。…46人の長老と7人の執事、7人の副執事、42人のアコルス(acolyth)、52人のエクソシスト、(聖書の)読み手、管理人、1500人以上のやもめと窮地にある人たちがいた。”
執事はやがて祭壇での奉仕にも就くようになっていきました。
執事の役目はいくつかありました。執事はやもめや孤児のための教会のお金や支給品を管理しました。使徒憲章(the Apostolic Constitutions)には、“それゆえ、兄弟たち。あなたは生贄と奉納物を大祭司にするように、あなた自身か執事によってビショップに持ってくるべきです”とあります。
また執事は教会の秩序を守っていました。クリュソストモスは、“例えば、祈りが進行中の時、人々がひざをかがめているところで、愚かで思慮のない若者が、年寄りも…クスクスと笑ったり、あからさまに笑い声を上げたり、喋ったり、-こんな事まで起こっていると聞いたが-互いにヤジったり…もしあなたがこれらを見たならば、彼らを叱りつけなさい。…執事を呼び、その権威で出来ることをしなさいと強く言いなさい。”と言っています。
時には執事は礼拝の中で福音書を読みました。聖餐式では神聖な器に触ることを許されていました。
また、ビショップの代理として改宗者に洗礼を授けることもありました。ジェロームは、“町から遠く離れたところに住んでいる場合に長老や執事によって洗礼を授けてきた教会の行いを私は否定しない。”と述べています。
執事の役目はこのように、ビショップのアシスタントとしてのみでしたが、洗礼を行うまで拡張されました。
新約聖書の時代、ビショップ(監督)と長老は2つの別々の役職ではありませんでした。
テトス1:5-9には、“あなたをクレテにおいてきたのは、わたしがあなたに命じておいたように、そこにし残してあることを整理してもらい、また、町々に長老を立ててもらうためにほかならない。 長老は、責められる点がなく、ひとりの妻の夫であって、その子たちも不品行のうわさをたてられず、親不孝をしない信者でなくてはならない。 監督たる者は、神に仕える者として、責められる点がなく、わがままでなく、軽々しく怒らず、酒を好まず、乱暴でなく、利をむさぼらず、 かえって、旅人をもてなし、善を愛し、慎み深く、正しく、信仰深く、自制する者であり、 教にかなった信頼すべき言葉を守る人でなければならない。それは、彼が健全な教によって人をさとし、また、反対者の誤りを指摘することができるためである。 ”とあります。
ビショップと長老(そして牧師)という呼ばれ方は同じ人を指して記述されています。
長老の起源は新約聖書に記されていません。最初に長老が出てくるのは使徒の働き11:29-30です。その時点で既に長老と呼ばれる役があったことが分かります。
おそらく、ユダヤ人社会では年配者をリーダーとする習慣がありましたので、そこから来たのではないかと思われます。
この「長老」という言葉はユダヤの背景から来ており、「ビショップ(監督)」はギリシャの背景から来ています。どちらも同じ役職を指していました。
しかし、2世紀の初めに、イグナティオスが手紙の中でビショップと長老を明確に区別しました。彼は教会は最高権威を持つひとりのビショップを持つべきだと主張しました。例えば、フィラデルフィアの人たちに宛てた手紙で、“気をつけてひとつの聖餐を持つように。ビショップが、長老や執事の助けを得ながら、ひとりであるように、主イエス・キリストの肉はひとつ、彼の血のつながりを示す杯はひとつ、祭壇はひとつだからである。”と記しています。
2世紀の終わりには、リーダーをひとりにする必要がでてきたため、各個教会は ひとりのビショップ、何人かの長老、何人かの執事を置くようになりました。
皇帝コンスタンティンがキリスト教を公認してから、この構造はさらに発展し、3つの聖職グループを形成するようになりました。最下位の聖職はエクソシストと(礼拝での聖書の)読み手、中位の聖職は長老と執事、最上位の聖職は教会のビショップたちでした。
長老は執事同様にビショップより下に置かれました。長老は奉仕と礼典で霊的な分野の補助をする、ビショップのアシスタントとなりました。
キプリアヌスが“私たちの内で、教会で進行(仕切り)をするのはビショップ”であると記しているように、ビショップは有効な洗礼と聖餐を行うことができるただひとつの役職でした。
地域教会の各ビショップはモノアーキ(Monos:ひとりで-Arkhein:治める)ビショップと呼ばれました。
5つの重要な都市(ローマ、コンスタンティノープル、アレクサンドリア、アンテオケ、エルサレム)にある教会では、メトロポリタン・ビショップと呼ばれました。特にローマのビショップは、ペテロとパウロの後継者とみなされていたので、法王と呼ばれました。
人々はローマの教会を帝国の西側における教会のトップだと考えていました。メトロポリタン・ビショップは各地域周辺の教会の上に権威を振るうようになっていきました。
アフラハトは西暦337年から345年の間に牧師にを書きました。
彼は牧師を“導く役職”、“彼の元にいる人々の預言者”だと説明しました。
彼はヨハネの福音書10:1-18に基いて、“牧師は群れの上におかれ、いのちの食べ物を羊にあたえる。誰でも注意深く、羊のために骨を折るものは、群れによく気を配る者であり、羊のために御自身をお与えになった良い牧者の弟子である。”と述べ、また、“ヤコブは牧者だった。ヨセフが牧者であったように、彼の兄弟は牧者であった。モーセは牧者であり、ダビデも牧者であった。アモスも牧者だった。彼らは皆、羊を養い、よく導いた牧者だった。”と記しました。
旧約聖書の時代から神の民のリーダーは牧者だった。イエスが教えられたように、牧師の最重要美徳は羊のために自身をあたえることだ、とアフラハトは続けます。“主が、あの牛を礼拝した罪のために、民を滅ぼそうとされた時、モーセは祈り、主に嘆願して言った。-民の罪の恩赦を、そうでないならば、あなたが書かれた本からわたしを抹消してください。これこそ羊のために自身を差し出す、最も誠実な牧者だ。これこそ羊のために自身を与えた素晴らしいリーダーだ。”
また、牧師の役割についても記しています。“群れ全体の長、群れを大変良くケアされた、あの誠実な牧者のように作られた牧者たちよ。彼は、かなたにいた者たちを近くに連れてこられた。疑う者たちを退けられた。病人を訪問された。弱い者を力づけられた。打ちひしがれた者と伴なられた。家畜を守られた。羊のために御自身を与えられた。素晴らしいリーダーたちを選び、指導し、羊をその手に任せ、群れ全体に対する権威を与えられた。”
使徒の死と、キリスト教の公認といった出来事に伴って、教会の役職は変化をしていきました。結果として聖職と信徒ははっきりと区別されるようになってしまいました。
聖職のうちでも3つのクラスが形成され、ローマのビショップは法王と呼ばれるようになりました。
各地域教会の権威はひとりのビショップ(監督・牧者)に置かれるようになり、長老は「霊的な」働きの補佐、執事は「物質的な」働きの補佐をする役となりました。
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